木村哲也
バイオリン製作家

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ビオラ選びのコツ:基本編

ビオラを選ぶ際、サイズや音色は重要な要素です。ビオラの大きさは、演奏の快適さに直結します。適切なサイズを見つけることは、楽器と演奏者の間に調和を生み出す重要な要素です。 また、ビオラの音色は個性を表し、演奏の表現力に影響を与えます。この記事では、ビオラ選びの基本になるポイントを解説します。

ビオラを選ぶ際の基本的なポイント

サイズと体格の適合性:

フルサイズのバイオリンでは、楽器の大きさは比較的一定で、長さや横幅は±10mm程度のばらつきがあります。しかし、ビオラの場合、その差異は大きく、ボディの長さだけでも390mmから440mmを超えるものまでさまざまです。さらに、サイズと言ってもボディの長さ、幅、厚み、そしてネックの長さなど、多岐にわたる部分の大きさを考慮する必要があります。

奏者が自身の体に合ったサイズのビオラを選ぶことが重要です。合わない楽器を選ぶと、演奏が困難なだけでなく、身体への負担も増え、怪我をすることにつながるので、注意が必要です。音色が気に入っても、無理をして大きすぎるビオラを選ぶのは避けましょう。

音色と響き、レスポンスの好み:

音色や響きの好みは、個々の感性や好みによって異なります。ビオラの音色も一様ではなく、暗く深いダークチョコのような音から、明るくはりのある音まで多彩です。バイオリンに比べると、ビオラの音色のバリエーションは広く、それぞれの楽器の特徴も明確です。

また、音色とは切り離せないのが楽器の反応やレスポンスです。楽器が奏者の意図したニュアンスをどれだけ素早く反映するかが重要です。良質な楽器は、奏者の意図を素早く捉え、独特のアタック音を含む音の立ち上がりが速い傾向があります。このような楽器は、演奏中に楽器自体が生きているような感覚をもたらします。

一方で、音量がより出る楽器を選びがちですが、楽器が持つ音色(おんしょく)の幅にも注目すべきです。絵描きでいうところのパレット上の絵の具の数のように、豊かな音色を持つ楽器が、演奏の表現力を豊かにすることにつながります。自分の演奏の可能性を広げるためにも、楽器の音色や表現力に焦点を当てることが重要です。

メープルとはまた違う魅力をもつポプラ。非常にビオラと相性の良い木材です。

材質と作り:

バイオリンと同様に、ビオラには通常、スプルースとメープルが使われます。しかし、バイオリンとは違い、裏板や側板にはメープルの代わりにポプラやウィローなどの木材が使われることもあります。ポプラやウィローは、メープルと比べて柔らかく、模様も地味ですが、適切に使用されれば強度に問題はありません。それどころか、独特の温かみと良いレスポンスをもたらします。

材料の品質は、見た目だけでは正確に判断できません。一般的に、表板に使われるスプルースは木目が真っ直ぐで、より細かい材が高いグレードとして評価されます。一方、裏板に使われるメープルは、杢と呼ばれる模様が派手であるほうが高いグレードとされます。しかし、音響的な観点から見ると、このグレードはあまり意味を持ちません。

一部の職人は「古い木を使用している」ことを前面にアピールして宣伝しますが、古い木が必ずしも良質であるとは限りません。ちなみに、オールドイタリアンの楽器には、節が入っていたり、模様がほとんど無かったりと、今でいう「良くない材料」が使われていることが頻繁にありますが、その音質は定評があります。

材料と同じように、楽器の作りに関して、専門的な知識や経験がないと判断するのは難しいです。しかし、見た目も重要です。自分の好みに合わないニスの色や形状の楽器を購入するのはおすすめしません。見た目は、演奏する際の気分や表現にも影響を与えますから、自分にとって心地よいものを選ぶことが大切です。車なども性能だけでなく、デザインも考慮しますよね。

作りについては、後日より詳しくお話ししようと思います。

楽器が作られた年代:

これはバイオリン属すべての楽器について言えますが、古い楽器が良いとは限りません。特に「オールド」と呼ばれるほどの古いビオラには、性能や状態が良いもの、そして適切なサイズのものが限られています。

1990年代半ば以降、ビオラ製作の技術は大幅に進歩し、さまざまなニーズに対応する楽器が多く作られています。そのため、品質の高い新作のビオラを見つけることが比較的容易です。実際、多くのプロのビオラ奏者が新作の楽器を好んで使用しています。また、バイオリンよりもビオラには製作者の個性が反映されやすいため、新作を探す過程でその違いを楽しむことができます。

個性的な楽器が多いビオラ

価格帯と予算:

予算をはっきりさせることは大切ですが、価格には様々な要因が関わります。高価な楽器が必ずしも最高品質とは限りません。特に日本では、新作でもイタリア製の楽器が一種のブランド化され、値段がかなり高騰しています。ただし、高価なイタリア製だけが最高品質というわけではありません。実際の性能や音質を見極めることが大切です。お店の宣伝文句に惑わされず、自分の耳と感性を信じて、慎重に比較検討しましょう。

試奏と比較:

なるべく多くのビオラを演奏して比較することは重要です。しかし、ただ闇雲にたくさんの楽器を試してみるだけではなく、自分の演奏スタイルや好みに合った楽器を見つけるために、普段から機会をうかがっていつもとは違う楽器を試してみることが良いでしょう。友人の楽器を弾かせてもらったり、弦楽器店や工房にある在庫楽器を試させてもらったりすることで、自分の好みや演奏ニーズに合った楽器を見つけやすくなります。また、楽器を試奏する際には、同じ曲目を演奏することで、楽器間の違いをより明確に感じることができます。

まとめ

ビオラ探しには、バイオリンとはやや異なる要素を考慮しなければいけません。それ故に、バイオリン探しとはまた別の楽しみがあります。この記事では、基本となるポイントについて手短に話しました。重要なポイントである「ビオラのサイズと音色の関係」などについては、次回の記事でより詳しく説明します。

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